国道完走のはじまり
なぜ国道を完走するのか,それは正直なところ分からない。
2010年8月,車を購入した。結果的にそれが国道完走のきっかけとなったが,購入時点では国道完走の計画も構想も全くなかった。そもそも道路好きでも車好きでもないから,本来,国道を完走しようという発想は出てこないはずなのだ。
しかし,その時は突然にやってきた。9月のある日,運転席で信号待ちしているときに,ふと,ドライブすることを考え始め,
- 車でどこか遠くに出かけたいな。
- 一般道でのんびり行きたいな。 ←高速道路はあまり好きじゃない
- ということは国道か。
- 国道は全国どこにでもあるはずだよな。
- なら,国道を使えば全国どこにでも行けるはず。
- そうだ,国道を完走しよう!
という論理破綻気味の思考経過をたどり,信号が青に変わって車が動き出すころには実施がほぼ決定していた。
検討
このように,きっかけが唐突な思い付きだったので,実現可能性があるのかという点についてはまず最初に知っておきたかった。ここで言う実現可能性には三つのものがある。一つは所要時間。一生かかってもできないくらいの時間が必要なら断念せざるを得ない。二つ目は客観性。どこが国道でどこが国道でないかということが明確であることが必要で,そうでないなら完走は成り立たない。三つめは費用。ある程度の金額は投入するつもりでいるが,それも程度次第。大雑把には見当をつけておきたい。
まずは所要時間を検討した。所要時間は国道の総延長から見当がつきそうだと思い,調べてみると,日本の一般国道の総延長は約67000kmとのことである。すべてを一筆書きで走れるわけではないから,実際に走る距離はそれよりもずっと長くなるだろう。それを含めてざっと11万kmと見積もると,1日あたり550km走るとすれば所要日数は200日。年間の活動可能期間は雪のない4月から11月の8か月間だから,1か月あたり平均5日の活動日を設けるとして,1年あたりの活動日数は40日。完走まで5年かかる計算か。不可能ではなさそうだ。
次に客観性について検討した。地図で描かれる国道は他の道とは色が違うし,地図を頼りに走ればきちんと国道完走できそうだというのが第一印象。とはいえ,道路との関わりは一利用者としてだけで道路の知識はまるでなかったから,念のため少し調べてみることにした。
すると分かってきたのが国道の多様性。国道が途中で二手に分かれたり,海を渡ったり,階段を通ったり,経路が変わったり,登山道になったり,一方通行だったり,建設中だったり,一部が県道に降格したりと,実に様々な国道がある。このような国道の完走の判定は人によって異なるかもしれず,曖昧さが生じる恐れもある。しかし,そういった特殊な場合を想定した独自の完走ルールを決めて曖昧さを排除すれば,十分な客観性を確保できそうだ。
続いては費用の検討。主な費用はガソリン代だろう。他には,フェリー/飛行機/レンタカーの料金,高速道路の通行料金がありそうだ。観光地/駐車場/温泉など各種利用料も少し積んでおこう。車の維持費や修繕費,あるいは食費といったものは国道完走に行っても行かなくても発生するし,国道完走による増加分も誤差の範囲だろうから計上しない。宿泊費は夜間行動の妨げとなるのでいらない。
まずガソリン代の試算。2010年秋時点のガソリン価格は130円前後なので,少し高めに推移するとして140円/L。車の公称燃費は14.4km/Lだが,長距離移動も多いから平均16.0km/Lくらいにはなるだろう。総走行距離は11万kmと想定したので,ガソリン代は約96万円,まあ100万円だ。
フェリーは北海道や,佐渡,対馬などの離島に渡るのに使う。10万円。
飛行機は船で行くのが不便な沖縄行きに使う。10万円。
レンタカーは沖縄と離島ほかで使う。10万円。
高速道路は必要最低限の利用にとどめたい。5万円。
観光地/駐車場/温泉など各種利用料は1日1500円くらいか。所要日数200日で30万円。
というわけで,合計は約165万円。年額33万円,月額2万7500円。5年間にわたる旅行代金だと思えばまあ許容範囲内か。
というわけで,国道完走は実現可能という結論に至った。
準備
実現可能とあらば,早速準備である。
準備とは言っても,物の準備は思ったほど多くない。日本全国を網羅する道路地図くらいだろうか。車,ナビ,ETC,カメラ等は手持ちのものを使うし,他に気付いたものがあれば後から順次揃えていけばいい。
むしろ,物以外の準備が肝要だ。必要だと考えたのは次の三つ。一つ目は国道完走ルールを作ること。前にも述べた通り,これは国道完走判定の曖昧さをなくすためのもので重要度は高い。二つ目は通行の記録方法を決めること。いつどこを走ったかを実用的かつ簡便な方法で記録して,後から振り返ることができるようにしたい。三つめは進捗管理方法を決めること。どこが通行済みでどこが未通行かを一覧性のある形で管理できるようにしておきたい。
まずは国道完走ルールを検討した。ルールの要件は次の二つ。分断国道や現道/新道の分岐,一方通行,通行止めなど,国道のあらゆる状況に対応できることが一つ。もう一つは通行のしやすさや名所巡りのしやすさに配慮すること。これらの詳細は別のところに記したのでここでは割愛する。
次に,通行の記録方法を検討した。この記録に求めるのは,行程のほどよい要約である。信号待ち程度の短時間でも記録できることが前提で,その範囲内でおおよその行程を後から再現できるようにしたい。さらに,旅行の行程をその場で時間順に概観できることが望ましい。
これをふまえ,次のような方法での記録を試してみることにした。良くない点があれば随時改善していけばいいだろう。
- A4用紙を縦置きにして30行ほどに分割する。
- 1回あたり1行を使って記録する。
- 記録時期は,路線番号変化時(必須)と,国道との交差点通過時(任意)
- それ以外にも必要に応じて適宜記録する。
- 次の内容を記録する。
- [必須] 日時
- [必須] 距離計の読み(km単位で)
- [必須] 路線番号
- [必須] どの路線との交差点か
- [任意] 天気と気温(次回以降の参考になる)
- [任意] 交差点名
- [任意] 道路状況(狭路,坂道,落石,渋滞,快走路など)
- [任意] 燃費計の読み(km/L)
- [任意] その他メモ
続いて,進捗管理方法を検討した。国道完走がある程度進むと,これまで通行したところを把握しきれなくなってくるはずだ。これを管理するには通行済み区間を地図に書き込んでいくのが一番分かりやすい。現地で通行済み区間の確認が手元でできるし,自宅で次回以降の旅程を検討するのにもとても役立つだろう。
問題はどんな地図を使うかだ。この目的で使う地図に求められるのは,ある程度の広域地図であることと,国道がきちんと描かれていることの二点。広域であればあるほど全体を見渡しやすい半面,国道の描写が省略されることになる。だから,国道が省略されない適度な縮尺の地図が必要となる。具体的には,九州や北海道といった一つの地方全体が1枚のA3版かB3版くらいに収まる程度のものが使いやすい。その縮尺はおよそ60万分の1から80万分の1くらいである。
ところが,書店で探してもその縮尺の地図は見つからない。ほとんどの道路地図は20万分の1だ。復刻版マップル全日本道路地図のようにB4版で25万分の1のものも一部あるが,それでも広域地図とは言い難い。仕方がないので,市販の地図をあきらめ,適当な縮尺のGoogleマップをA3またはA4用紙に印刷して持ち歩くことにした。
もっとも,この地図問題は地域ごとの差はあるものの,後に高速道路の休憩所や道の駅で無料配布されている地図でほぼ解決することになる。これについては別の機会に改めて記そうと思う。
というわけでほぼ準備は整った。あとはどこに行くか決めるだけ。
作成日:2016/08/22
更新日:2016/08/22