国道418号 恵那−八百津 その1
通行日:2012/05/19(土)

国道418号 恵那−八百津 について

ここで紹介する国道418号の恵那−八百津間は,岐阜県恵那市から岐阜県八百津町に至る,木曽川沿いの酷道区間である。この区間は川の上流側から,武並橋 - 3.5km - 笠置ダム - 7.5km - 町道分岐 - 3.5km - 二股隧道 - 3.5km - 旧県道分岐 - 1.5km - 旅足橋 - 2.0km - 丸山ダム - 0.5km - 丸山バイパス交点,の約22kmからなる。特に,笠置ダムから旧県道分岐までの約15kmは,酷道の中の酷道と位置付けられているようで,久しく通行止めとなっているとのことである。

今回の初訪問に先立ち,事前の情報収集を行った。それによると,

  • 笠置ダム−二股隧道間は1.0車線のダートの崖道でガードレールはない。
  • 笠置ダム付近と町道分岐付近には一人で動かすのが困難なバリケードがある。
  • 笠置ダム−町道分岐間に,道路が藪に覆われて埋もれていたり,一人では動かせない巨大落石があったりする。
  • 笠置ダム−町道分岐間に崖崩れがあり,そこを越えるための仮設階段がかけてある。

というのが2011年春ごろの状態らしく,現在(2012年5月)でも自動車での通行は不可能だろうと予想できた。
そこで,今回はこの状態が現在も続いていると想定し,自転車で笠木ダムから丸山パイパス交点までの通行を試みた。

実際に通行してみて意外だったのは笠置ダム−町道分岐間の状態が想定よりもずっと良かったこと。両側のゲートさえ開いていれば普通車で通行可能と判断できる程度の状態だった。
もちろん,この場合の「通行可能」とは,土砂崩れやバリケードがないという程度の意味である。離合不可の狭路が大半を占め,ガードレールのない崖道で,落石が多く,ダート路であり,ぬかるみもある,という酷道要素満載の道路であることは言うまでもない。

国道418号 恵那−八百津 の経路図

 

武並橋

画像

北側から見る武並橋の全景。赤色が山によく映える。

武並橋は木曽川にかかる国道418号の橋で,国道19号の高架下から約7km北に行ったところにある。国道418号はここから木曽川沿いの道となる。
国道19号方面から武並橋に至る最後の約0.5kmは狭路である。武並橋の北側の黄色の看板(写真左端)には「すれちがいできません!橋の上は,道路が狭くなっております」と書いてある。実際,武並橋上は1.2車線幅で車同士では離合できない。


武並橋から笠置ダムへ

画像

武並橋を渡ったところ(北側)で正面に見える案内標識。

国道418号方面は点線と赤の×印で表され,ほとんど存在しないも同然の扱いとなっている。
しかし,これから向かう笠置ダムはその方向にある。

画像

武並橋を渡って左折後にある,県道との分岐付近に設置されている案内板。

岩浪−川平間の5500mが車両通行止めということだが,無人地帯らしいのに川平という地名がちゃんとついている。

さて,武並橋から約2kmは,一部離合困難なところもあるが,1.5車線ほどの道路が集落まで続く。
集落を過ぎると,笠置ダムまでの約1.5kmは1.0車線の狭路となり,離合不可能なところが多くなる。離合は,少ないながらも広くなっている部分があるのでそこで行うことになる。ガードレールはところどころに設置されている。
早朝のためか武並橋から笠置ダムまでの間で対向車はなかった。

笠置ダム

画像

笠置ダムを過ぎてすぐのところにあるゲート。

事前の情報収集によると,ここにはガードレールなどを並べたバリケードがあるはずだったのだが,実際には廃材を寄せ集めた即席バリケードではなく立派なゲートである。
このゲート,高さは170cmから180cmほどあり,左右には人が通れる隙間はない。
左側の地面はゲートの高さと同じくらいの高さがあってゲートを越えられそうにも見えるが,ゲート左側の隙間はそれより高めの柵でふさがれていて,そこから乗り越えるのは難しい。一方,右側には人用の小さな扉があるが施錠されており,ここから入ることもできない。

左側の白い看板には,「この先,土砂流出の恐れがありますので 立ち入りを,禁止します。恵那土木事務所」とある。

画像

ゲートを背にして有刺鉄線越しに見る,夜明けの笠置ダム。

時刻は4:30過ぎ。天気は快晴で無風。いい加減な温度測定によると気温は約10度。笠置ダムは静かな朝を迎えた。
ここで,自転車の再点検,持ち物確認,食事,写真撮影など,長めの休憩。

画像

ゲートを通過して,中から振り返っての一枚。

時刻は5:30。少し肌寒いので手袋着用で出発。主な持ち物は,簡易雨具,ライト,飲み物,食料少々,GPSロガー,デジカメほか。リュックにはまだ空きがあり,荷物は比較的少なめ。

この先は経路は,大半が川沿いの区間のため急勾配の坂道はなさそうであり,地形図の等高線からもそれが読み取れる。また,ここ笠置ダムは丸山ダムより上流に位置するため,全体としては緩やかな下り基調の行程が想定される。このため,万一,途中で引き返すことになったとしても無理なく帰って来られるであろうと考えられる。

笠置ダムから町道分岐へ (前編)

画像

笠置ダムのゲートから約300mの地点。

笠置ダムのゲートからこの先200mくらいまでの約500mの区間は,ガードレール付きの1.2車線路である。 路面に枯葉や枝が多少あるが,車での通行にも支障はない。平坦な舗装路は自転車にとっては快走路である。 いつまでもこんな風だといいが,もしそうなら酷道として名を馳せるはずもない。 200mほど先のガードレールの切れ目が悪路の始まりかもしれない。

左カーブの手前に標識が見える。近づいてみると‥‥

画像

自動車通行止めの標識と通行禁止の案内板。

待避所とセットになっていてここで引き返すことを促している。 笠置ダムのゲートからは初めての待避所である。
案内板は汚れなのか腐食なのか,文字の判読が難しい部分があるが,次のように書いてある。

通行止め
国道418号は
ここから先5500mの区間は 幅員狭小路肩軟弱で危険なため通行を禁止します
岐阜県恵那土木事務所

ちなみに案内板に描かれているのは赤丸に赤で×印の,全面通行止めの標識。 約5.5km先にある同様の案内板とは微妙に内容が異なる。

画像

笠置ダムのゲートから約1.3kmの地点。

舗装された道路はすでに終わり,1.0車線のダート道となっている。 ガードレールなしの断崖の道である。 ぬかるみはないが,路面には枝や枯葉が多く,小ぶりな落石も目立つ。 自転車では枝を拾ってチェーン等に挟まることがある。

「ダムから14.0km」という案内板があり,すぐ後ろに頭なしの標識柱がある。 そばには「保安林」の立て札が倒れている。
ダムというのは下流の丸山ダムのこと。 頭なしの標識柱の主は,過去の写真によると最大幅2.0mの標識らしいが,付近には落ちていなかった。

画像

笠置ダムのゲートから約2.2kmの地点。

新しそうな擁壁があり,最近も整備が行われていることをうかがわせる。 この道路は廃道化して自然に帰っていく過程にあると想像していたが,実際に通行してみると,むしろ廃道から林道レベルに復帰してきている印象を受けた。

ここでAUの携帯電話を取り出してみた。アンテナ本数は3本で電波状況は良好。こんな無人地帯なのに。

画像

笠置ダムのゲートから約4.0kmの地点にある,木曽川の支流,大沢川にかかる橋。

そういえば,事前調査からの予備知識では,巨大落石や仮設階段にはここまでの間に遭遇するはずだったのだが両方ともなかった。 復旧作業はそれなりの規模で進められたようだ。

画像

この橋の欄干の銘板が外されていて,橋の名前や造られた時期は分からない。苔むしたコンクリートや古びた外観は何となく昭和時代中期の雰囲気を醸しているように感じられる。

ここまでの道路は相変わらず1.0車線の崖道。崖は険しいが,木曽川の水面は穏やかで,道にはあまり勾配はない。車で道を踏み外したら,木に引っかかる可能性もあるが,基本的には川まで落ちてしまい助からないと思う。これは自転車でも同様。

この辺りでの時刻は6時過ぎ。鶯の声と川の音だけが聞こえる静かな山の中。

画像

笠置ダムのゲートから約4.7kmの地点。

「ダムから10.8km」とある。この「ダム」は先ほどと同じく丸山ダムのこと。

道の左側には転落防止対策のコンクリート製の出っ張りが設けてある。
右側には木の枝が垂れ下がっている。程度は全く大したこともないのだが,ここまでの道のりでは車での通行時に接触するような枝はなかったので少々目立つ。

路面は硬めのダートで勾配もほとんどなく走りやすい。

画像

笠置ダムのゲートから約4.8kmの地点。

路面が完全に枯葉に覆われている。ときどきこんな区間が現れる。

画像

笠置ダムのゲートから約5.3kmの地点。

ここにも新しそうな擁壁がある。さっきの擁壁とほとんど同じ景色。
道は相変わらず狭いが整備の手は入っている。車を通すことを前提に整備しているように感じられる。

画像

笠置ダムのゲートから約5.5kmの地点。

車2台とバイク1台が放置されている。かなり時間が経っている様子である。
目立たないところに捨てようと手間をかけてわざわざこんなところまで持ってきたのだろう。 しかし,皮肉なことにこの車はこの道路の名物となっているらしく,酷道サイトにも頻繁に登場する有名廃車である。

この少し前には自動販売機が道の下の斜面に廃棄されているなど,この辺りは大型投棄物が目立つ印象だった。

画像

笠置ダムのゲートから約5.6kmの地点。

はっきりした轍が見て取れる。日々往来があるような雰囲気さえ漂う。 通行止め区間なので実際には交通量はほとんどないはずだと思うが。

国道と右の石垣との間に細い通路のような斜面があって,上に延びている。 昔はその先に家があったのかもしれない。

画像

先ほどとほぼ同じ地点から見た木曽川。

手前側はまだ山の陰になっている。引き続き木曽川の右岸を下流に向かって進む。

AUの携帯電話の電波状態はここでも良好。アンテナ3本。



作成日:2012/06/01
更新日:2015/05/10